嚥下内視鏡検査ってなんだ?!

嚥下内視鏡検査

こんにちは、静岡市駿河区敷地の小澤歯科クリニックです。

今回は私たちが行っている嚥下内視鏡検査についてお話していきます。

説明にあたって先日嚥下内視鏡検査を実際に行った方に許可を得て写真を使用しています。

「最近食べなくなった」「体重が減った」「よくむせるようになった」「食べこぼすようになった」「歯が痛くて食べれないんじゃないか」「微熱が出るようになった」「普段口から何も食べてないので何か食べ物を食べさせてあげたい」

このような様々な主訴をもとに嚥下診察を希望されます。

こういった様々な思いに対して用いられる検査の一つに嚥下内視鏡検査(VE)という方法があります。

鼻から内視鏡を通し、その状態で食べ物を摂取していただき咽頭の状態をカメラで観察する方法です。

リアルタイムで食事の状態を把握することができ、録画もできるためご家族や介護の方にも具体的な説明をしやすいです。

リスクとしてごくまれに検査の緊張や刺激による失神発作や粘膜を傷つけることによる出血することがあるので、細心の注意を払って検査を行います。

主訴は最近食事の際に口の中に食べ物が残ることが増えてきたという八十代女性の方です。

今回用意していただいた食事はこちらになります。

嚥下診察 食事
軟飯 トロミお茶

嚥下内視鏡を行う際にエンゲリードといったリスクの少ないゼリーを用いることもありますが、今回は普段からお食事されているものを用意してもらいました。

おかゆや、一口大の鶏肉、かにかま、煮物、トロミ付きお茶、トロミなしお茶、ラコール等用意されています。

実際に食べてもらった姿勢はこちらです。

旦那さんが長年にわたり献身的に工夫され介護されているため、クッションや枕をうまく使い姿勢がぶれずに安定して食事をとれるよう姿勢介助を行ってくれていました。

ただ今回写真には足が写ってなかったのですが足が少し浮いた状態だったため、足置きをおすすめさせていただいています。

食事姿勢と食事内容を確認したら食事前に鼻や咽頭の状態を確認していきます。

今回咽頭に痰の貯留は認められずきれいな状態でした。

普段からむせている方や一見むせてないけどむせている不顕性誤嚥といった状態だとこの検査画面で痰が認められることもあり咽頭の痰吸引の必要性や誤嚥性肺炎のリスクについて説明させてもらうことがあります。

トロミのついてるお茶やトロミのないお茶、ラコール、おかゆを食べてもらっているところです。

この方はトロミのないお茶では誤嚥が認められたため、介助をされている旦那さん、ケアマネさん、デイの栄養士さんに水分に対するトロミの使用をお願いしています。

今回の内視鏡検査には旦那さんに食事の介助をお願いしており、ケアマネさんにも実際に立ち会っていただき食事の姿勢や食べ物の状態、カメラの画面をそれぞれリアルタイムで見てもらっています。

こういった理解のしやすさは内視鏡検査の素晴らしいところだと思います。

主訴の口の中に食べ物が残って困るということですが、患者さんの口蓋が深く舌の力が衰えてきたこともあり口蓋部分に食べ残しが大量に残ってしまっていました。

具体的に言うと、上あごの凹みが一般的な人に比べ立派で、舌の力が弱くなってきてしまったこともあり、舌が上あごまで届かなくなってしまって口の中に残ったご飯を弱った舌が喉にきれいに運ぶことができなくなっているんじゃないかと考えました。

意思疎通が可能な方の場合はこのような場合PAP(舌接触補助床)といった装置を作成させていただきお食事の助けを行えます。

しかし、今回の方の場合ご家族の方では装置のつけ外しが困難である事や患者様本人が装置をかみ砕く可能性がありPAPの作成は断念しています。

当面の治療方針として、口腔内の食物残渣量低下や細菌量の低下を目的として虫歯治療や口腔ケアを行いつつ、頬舌訓練や肩部のROM訓練を行っていくこととなりました。

3か月後の現在、舌や頬粘膜の動きも以前より良くなり口腔内の食物残渣の量は内視鏡検査時と比べ少量になりました。

ただ、咽頭のゴロ音等の痰の貯留が疑われる所見も以前より認められるため引き続き誤嚥性肺炎のリスクに注意して口腔ケアや食事診察嚥下訓練等の介入を行っていきます。

状態の大きな変化が認められる際は再度内視鏡検査を行いフォローしていく予定です。

このように口から長く食べるためになにができるのかと探るために嚥下内視鏡検査や食事診察を行っています。

最近食事量が減った、ゴホゴホ咳をしているのが増えている、なぜか急に食べこぼしが増えた等いろいろな訴えの中に誤嚥性肺炎のリスクが潜んでいることも多くあります。

診療を行う中で嚥下内視鏡検査や食事診察といったお口から長く食べるためのアプローチはまだまだ知られてないなと実感しています。

今回そういった中写真の掲載を許可してくださった患者さん、ご家族の方ありがとうございます。

これからもこういった情報発信を行えたらなあと思います。

気になる症状がある際はお気軽にご相談ください。